太極武藝館


太極武藝館脱力を考える




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「脱力」は、重力を相手への影響力とする


 これから、本題の「脱力」について分析していきましょう。
なぜ、武術の極意や原理に「脱力」を充てる、という考え方が生まれたのでしょうか?
先ず初めに、その点について考えて見ることにしましょう。

 「脱力」の最も重要なポイントは、筋肉から発せられる力を利用するのではなく、 
「重力」を利用し、筋肉はその重力を伝えるために使われる、という点にあります。

 それでは、なぜ、チカラを発するために「筋肉」を使おうとしないのでしょうか?
この点は、人体の構造について考えると、簡単に説明することができます。




 例えば、上肢の屈筋である、おなじみの「上腕二頭筋」について考えて見ましょう。
 この筋肉は、肘関節をまたいで、上腕骨(上腕)と橈骨(前腕)をつないでいます。
図を見るとわかるように、上述した「力のモーメント」について考えると、筋の付着部位が支点に近く、力のモーメント(回転力)を発生させるためには、あまり適していないことがわかります。

 しかし、その代わりに、私たちは手先を「素早く動かす」ことができます。
つまり、「筋肉」は、もともと、動作は速くできても、力を出すことには適していない構造になっているのです。 このため、筋肉は「力を出すため」ではなく「動作をするため」に使われるのです。

 次に、「脱力」を用いて、どのように「重力」が利用されるのかを考えてみましょう。

 「力学的エネルギー」の章を参考にしてもらうと理解しやすいと思いますが、
「重力」を利用する場合には、まず重心を高くしておく必要があります。
 なぜなら、はじめの「位置エネルギー」の総量が、もうすでに、使える「運動エネルギー」の上限になっているからです。

 したがって、この高い位置にある重心を、重力を利用して落下させることで「運動エネルギー」に変換し、相手への影響力とするのが「脱力」の技法の基本となります。

 このことは、例えば、上の階に居る人が、一階に居る人に荷物を投げ渡す場合を考えて頂くと分かりやすいでしょう。
 同じ階に居る人から荷物を渡されても、あまり影響力がありませんが、同じ重さの荷物を二階から渡されたり、さらに三階から渡されるとなると、かなり影響力が大きくなってくるということが容易に想像できるはずです。


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