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太極武藝館居着きを科学する


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大腿四頭筋と「居着き」


 次に、「大腿四頭筋」と『居着き』について解析していきましょう。

 大腿四頭筋は1個の直筋と3個の広筋からなる筋群ですが、股関節の屈曲と膝関節の伸展をさせる作用を持っています。
 また、大腿四頭筋主動による歩行は、次の3種類の『居着き』を含んでいます。

 第一番目は、止まっているところから一歩踏み出す際に、身体を前進させるための原動力にするために、膝を緩め、重心を少し落下させなければならない、ということです。
 この落下は非常に短い時間ですが、当然、戦闘状態で相手と向かい合っている際に動くためにはかなりのロスになっている事は容易に想像がつきます。





 二番目は、大腿四頭筋によって膝を伸ばすことで游脚期に移行するために、游脚期の途中で膝が完全に伸ばされロックしてしまうので、身体が推進力を失い、落下し始めてしまう、ということです。
このことは、「相反性支配(*註)」により、大腿の後側の筋肉を使えなくなる事に起因しています。





*編註:

「相反性支配」・・・肘や膝のような関節は互いに関節を逆方向に

動かす伸筋と屈筋によって動くが、伸筋を伸張させると人は反射のために伸筋収縮と屈筋弛緩をしやすくなる。反対に、屈筋を伸長させると人は反射のために伸筋弛緩しやすくなります。このような反射の構成を相反性支配と呼ぶ。
 この相反性支配のため、大腿四頭筋を主動として下肢を使うと、股関節を伸展する作用と、膝関節を屈曲させる作用を持つ大腿後側の筋を効率よく使う事が出来なくなり、結果として上述の様に落下してしまう事になる。



 三番目は、出された足が地面につく瞬間に、大腿四頭筋の膝のロックのために、身体が歩行している方向とは反対への力を生じさせてしまう、ということです。
 この力が、歩行とは反対方向への加速度を生み、ブレーキをかけながらアクセルを踏んでいるというような矛盾を歩行の中に作り出してしまいます。





 結局、通常歩行においては、腕の振りや身体の左右への振りによって動的安定性を保っている様に見えますが、実は、立脚期から游脚期への移行するときと、游脚期の後半においては歩行を行っている本人にとっては無意識的に落下が生じているため、上下方向において動的安定性を失っている、と私は考えています。
 その時、この歩行では制御不能の状態に陥り、慣性に委せて動いてしまっています。私はこの歩行を、先述の「静歩行」と「動歩行」のどちらでもないため、【偽性歩行】と呼んでいます。
 そのような歩行をしている人は動的安定性を失っているため、その瞬間に動ける訓練を積んでいる人にとってはかなりの時間をロスしている様に見えるのです。


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