最後になりますが、われわれの行動はそのすべてが「重力」によって束縛されています。ちょっと難しい、と思う方は結論だけ読んでいただいてもかまいません。
「振り子」を例にとって考えてみましょう。
下図のように、糸の上端を固定して下端にオモリを付け、横に引いて静かに手を放すと、錘は鉛直面で往復運動をします。
これを単振り子といいます。
質量 m のオモリが受けている力は、重力と糸の張力です。
円弧上を運動しているオモリに働く力 F の運動方向の力の成分は、反時計回りを正とし、糸が鉛直方向となす角をθとすると、−mgsinθとなります。そこで、つりあいの位置 O からの水平方向の変位を x 、糸の長さを l とすると、
と表すことができます。
この式はθが十分に小さいときにはオモリは点 O を通る水平方向の直線上を運動していると考えることができるので、オモリは、点 O を振動の中心とする単振動をしているとみなせます。そこで、単振動をしている質量 m の物体が受ける力 F は運動方程式より
となり、(1)、(2)を用いると、
単振り子の周期T(一往復するのに必要な時間)は、
となります。
θが小さい範囲では、オモリの質量や振幅に無関係であることがわかります。
この周期が振幅に関係しないことを振り子の特時性といいます。
なぜこのような話をしたのかと申しますと、
振り子というものは、その質量がどんな値であろうとその周期には影響がない
ということを示したかったからです。
もっと簡単に言いますと、
ブランコに、赤ちゃんが乗っても力士が乗っても、そのブランコの長さが一緒だったら、速さは同じになってしまう
・・ということです。
当然ながら、これをそのままヒトの実際の動きに当てはめることには少々無理がありますが、この例によって、ヒトはその速さすら「重力」によって束縛されているということが、少しは理解していただけると思います。
ヒトは、地球上で運動をしている限り、「重力」の有効な利用法を考え続けていかなければならないのです。
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