太極武藝館


太極武藝館居着きを科学する


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押す人はどのようになっているのか

<図15>

 これまでは押される人について主に分析してきましたが、今度は視点を変えて、押す人を分析してみるとどのようになっているのかを実際に考えてみましょう。
 <図1>のときについて考えてみると、<図15>のようになっています。
・・どこかで見覚えがないですか?
そうです!<図2>(押される人の力の分析の図)とほとんどいっしょなのです。


 違うところは、<図2>では重心にかかっていた押される力がこの場合では押す人の手に反作用として働いているところです。点Pの床からの高さをLとします。(ちなみに、垂直抗力や摩擦力も違うのですが、考え方を単純にするため、同じ記号を用いています。)
 このとき、押す人も当然、かかっている全ての力の和が0になっていることと、任意の点における力のモーメントの和が0になっていることが必要であるので、



 こうしてみると、非常に面白いことが分かりますね。注目しておきたい部分は(10)式の部分なのですが、押す人の後ろ足を中心に時計回りに回転させる力のモーメントであるFLが働いています。
 Lというのは相手の重心の位置なのですが、このとき、Lの値が大きい方押す人は崩れやすいと言うことになります。つまり、押される人の重心が高い方が押す人は崩れやすくなっているのです。


<図16>

 分かりやすくするためにこのことを具体的な値を入れて計算してみましょう。
 <図16>のように押す人の体重を60[kg]前足と後ろ足の幅を1.0[m]、重心の位置は前足から0.40[m]、高さを0.50[m]と仮定します。また、押す高さはL[m]重力加速度を
g(=9.8)
とします。



このとき、押す人が最大の力を発したときはN’=0と見なしてもよいので、




 この(12)式は押される人の重心の高さと押す人の最大の力の関係を表しています。


<図17>

 簡単に言ってしまうと、<図17>を見るとお分かりのように、重心が高ければ高いほど押せる最大の力は小さくなっていってしまうのです。もちろん、重心が高ければ、押される人も動かされやすくなってしまうので、一概に重心を高くすることがメリットとはいえないのですが、押す側から考えてみると、重心を低くすることだけが相手が押してくるのを耐えられる方法ではないということが伺えます。


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